Movable Typeを利用するメリットとは?
一般的にウェブサイトはリリース後も頻繁に修正が加えられ、時には複数の担当者や制作会社が関与することもあります。そのため、CMSの選定はさまざまなシチュエーションを考慮することが求められます。先端的な技術を用いた話題性の高いものもありますが、安全性や長期のメンテナンス性を含めて考慮すると、選択肢はおのずと絞られてきます。そしてこのような視点で評価したとき、Movable Typeは有力な選択肢の一つとなるでしょう。
第二回ではMTを採択する際のメリットについて詳しく解説します。
Movable Typeのメリットについて
MTを利用するメリットは、実際に運用するクライアント側、制作を行う開発側の双方にあります。
クライアントから見たメリット
国内の企業が開発を行っていること
MTは現在日本国内で開発されています。情報が日本語で提供されることはもちろん、サポートが日本語で受けられることも安心できるポイントです。クライアントにとって未知のソフトウェアの導入は慎重にならざるをえませんが、国内の製品であればハードルは下がります。日本語に起因するトラブルなどのローカルな問題が発生した場合でも、適切な対応が受けられる可能性が比較的高いといえるでしょう。
公的機関や大企業で多数の導入実績があること
20年以上の歴史を持つMTは、これまで業種や団体を問わず多くのウェブサイトで導入されてきました。製品を評価する際に十分な実績があることは、導入を決める大きな後押しとなります。特に国内の公的機関での利用率の高さが強みで、安全性を重視する組織にとっての安心材料となります。
パートナーネットワーク(ProNet)の存在
MTを使用した開発で相談が必要な場合は、シックス・アパートが提供する「ProNet」パートナーネットワークの利用をおすすめします。ProNetには国内の様々な制作会社が参加しており、実績のあるパートナーが開発相談に応じます。実績のある開発会社への依頼もでき、万が一何らかの理由で既存の会社との契約が終了した場合でも、スムーズに次の会社を見つけることができます。
国内でメジャーなCMSなのでリスクヘッジになる
MTは国内で最も多く使われている商用パッケージ型CMSの一つです。スクラッチで制作されたものやマイナーなCMSの場合、万が一制作会社とトラブルが起きた場合にメンテナンスを引き継ぐ会社を探すことに苦労するといったこともありえますが、知名度が高いCMSであればそのようなことは起こりづらくなります。
シックス・アパート社のお客様ページ
https://www.sixapart.jp/about/customer.html
開発側から見た場合のメリット
日本語でドキュメンテーションされている
ドキュメントが日本語で提供されているため、開発者が英語がわからない場合でも仕様を正確に確認することができます。また、新しい開発者をトレーニングする際にも役に立ちます。またフリーワード検索で関連する情報やプラグインを調べることも可能です。
セミナーやユーザーコミュニティの存在
シックス・アパートは定期的にユーザー向けのオンラインセミナーを実施しており、はじめての方でもハンズオン形式でMTに触れる機会や、知識を得ることができます。
また、ユーザー主導の地域別のコミュニティ(https://www.movabletype.jp/usergroup/)や、MTDDC(Movable Type Developers & Designers Conference)のように年に一度開催されるようなイベントもあるなど、開発者同士で助け合える環境が整っています。MTDDCでは、関連企業なども一堂に介し、積極的にナレッジを共有しています。(2024年は2回開催の予定です)
サーバーの運用コストを下げやすい
CMSサーバーとWebサーバーを分離する構成など、セキュリティリスクが低い構成を取ることで、MTの脆弱性が発見された場合でも外部からの接続を抑え、落ち着いて対応することができます。
CMSサーバーを分離することで常々アップデート作業に追われる必要がなくなり、メンテナンス工数を削減できます。また、WebサーバーをAmazon Web ServicesのS3などに置き換えることで、サーバー要件によってはインフラ費用を抑えることも可能です。
Movable Typeを利用するデメリットについて
逆に以下のような場合はMTが得意でないケースが多く、別のCMSを検討した方が良い結果が得られることがあります。
MT単体で、WebサービスやECサイトを構築することは難しい
MTは、会員情報や在庫情報等の情報を基にした動的な表示・処理が必要なWebサービスやECサイトの構築には適していません。MT自体にも動的なサイトを動作させる機能は搭載されているものの、使用例がかなり少なく、それを主力とするCMSがほかに存在するため、わざわざMTで行う必要はないといえます。
また、最大の特徴であるセキュリティ面の安全性を失う理由にもなります。
※Movable Typeで動的処理を扱う場合には、それぞれの機能に特化したサービスと連携する形が望ましいです。これは別項でご紹介いたします。
海外でのシェアが少ない
日本でのシェアは高いMTですが、国外のシェアについては低い状況となっております。例えば海外の開発チームがいる場合などはエンジニアが利用経験がない場合が多く、MTを採用することでデメリットにつながるケースがあります。
Perlを利用している
Perlは非常に歴史の長い言語ですが、現状他のプログラム言語と比較すると相対的にエンジニアの数が少なくなってきています。そのため、自社でプラグイン開発を行う際にはエンジニアの確保に苦労するケースがあります(プラグインの利用やテンプレート開発にはPerl言語は不要です)。
初めてプラグイン開発を行う際には、パートナーネットワークであるProNetに加盟しているプラグイン開発ができる会社に相談することをおすすめします。
他のCMSと比較する
新規でCMSを選定する場合、他のエンタープライズ向けCMSとの比較も行うようにしてください。メジャーなものは以下のようなものがあります。
WordPress
ブログから高機能なサイトまで構築することができるオープンソースのCMSソフトウェア。日本だけではなく、世界でもっとも利用されており、デザインを切り替えることができるテーマや機能拡張できるプラグイン等も無料・有料問わず幅広く提供されています。
PHPによる動的なページ生成を行うCMSとなり、フォームや会員認証などの動的処理などもCMS上で行えます。またWordPress5.0から搭載されたエディター「Gutenberg(グーテンベルグ)」では、ブロックを組み合わせてレイアウトすることができます。ウェブサイトを見たままに編集することもできる直感的な操作も魅力の一つです。
最近はWPEngineやKinsta等の専用ホスティングサービス等も普及しており、セキュリティアップデートを自動で行えるようなサービスも増えてきています。
Drupal
大企業や政府機関など大規模なサイトを中心に幅広く採用されているオープンソースのCMSソフトウェア。PHPを利用し、「CMS」と「Webフレームワーク」の両方の良さを併せ持つことで、他のCMSよりも複雑な機能の開発が可能です。
ソフトウェア標準で承認ワークフロー機能や多言語機能を有しており、それぞれの地域・言語を統合的に管理できるため、グローバル展開を行っている企業や政府機関に採用されています。また拡張モジュールをインストールすることで様々な機能拡張を行うことができます。
最近は、Drupal創業者であるDries Buytaertが立ち上げたAcquia(アクイア)社が提供するクラウドプラットフォームの普及も進んでおり、セキュリティに配慮され、マーケティングサービス等が一体化した環境での利用が進んでいます。
Adobe Experience Manager(AEM)
Adobe社が提供する大企業向けのウェブサイトに適した商用CMSソフトウェア。
大企業向けに必要な承認ワークフロー機能、多言語機能、また複数のウェブサイト管理機能等も備え、Drupal同様にグローバル企業での採用が多いCMSです。
Adobe社が開発するCMSということもあり、「デジタルアセット管理(DAM)」に強みを持ち、一元管理された素材を編集してそれぞれのページで利用できます。また、分析ツールであるAdobe AnalyticsやマーケティングツールのAdobe Targetとの連携により、より高い効果を発揮することができます。
Sitecore
デンマークのSitecore社が提供するMicrosoft.NET テクノロジー(ドットネット)に対応した商用CMSパッケージ。豊富なマーケティング機能を活かして中規模や大規模サイトに導入されています。
.NETに完全準拠したシステムのため、Microsoft Dynamics CRM等の連携や.NETベースの他システムとの連携が強みです。顧客情報の一元管理がしやすく、A/Bテストやパーソナライズ機能などの豊富なマーケティング機能により、それぞれの顧客に合わせたアプローチが可能です。
その他のCMS
この他にも、ビューワーが存在せずフロントエンドを切り離して運用するヘッドレスCMSや、EC向けに特化したShopify、マーケティングツールに組み込まれたHubSpotなど、それぞれの用途に特化したCMSがあります。国内の商用パッケージCMSソフトウェアは数多く存在し、ここでは紹介しきれないほどです。
各CMSは一般的なウェブサイトを構築するために必要な機能を備えています。それぞれのCMSの得意とする機能や、費用面、開発パートナーなどの特徴を把握することで、選定時の要件が明確になります。
まとめ
技術的な面での新しさや話題性は他のCMSに軍配があがる点もあるものの、Movable Typeには歴史の長さにより積み重ねられてきた資産の多さと、エンタープライズ利用における安定性は十分に魅力的な要素となるでしょう。
ウェブサイト制作の仕事は単にリリースをして終わりではなく、納品後もクライアントのプロジェクトにそのまま伴走することもしばしばあります。誤った技術選定は後々、会社に大きな負荷をかける可能性があります。そのため、求められる開発要件に照らし合わせて最適なCMSを選ぶことが重要です。